はしか(麻疹)が都内で発生しています

最近ニュースでも麻疹(はしか)患者さんの発生が取り上げられるようになりました。人数的にはそれほど多くないのにどうして報道されるのだろうかと思われる方も多いかもしれません。その理由は感染性が極めて強いことにあります。新型コロナ感染症が始まったころは物々しい防護服で対応する姿が報道されており、同じ空間にいただけでも感染するのではというイメージがありました(結果的にはエアロゾルという概念に落ち着いたみたいですが・・・)。麻疹はまさにこのタイプ(空気感染)の感染症であるため、患者さんと一緒の空間(電車や劇場など)にいたかどうかが大きな情報となるため乗車した列車などが公表されることがあります。

 病名としては麻疹ですが、ちくちく・ひりひりかゆいという意味の「はしかい」という言葉を由来にして「はしか」とよばれています。発疹を伴う発熱の鑑別として意識しなければならない疾患ではありますが、わが国では発生頻度が極めて少ないため行動歴などの情報がないと検査(血液検査なので結果が数日かかります)をするか悩ましいものがあります。癒合をともなう発疹が特徴とされるものの、ほかのウイルス感染でも似た発疹がでることもあり発疹を見ただけで判断がつくケースはすくないのではと思います。また初期は、発疹はなくてカゼ症状だけということもあります。そのため都内で麻疹が報告されている状況ではコロナが落ち着いてもカゼ症状の方は別室で対応する必要があると考えています。

 麻疹は免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するとされていますが、特効薬などはなく脳炎などを合併するなど先進国でも1000人に一人が亡くなります。わが国では前述のとおり国内での流行が抑えられているためワクチン接種の有無が重要となります。子供においては定期接種が行われていますが、大人は世代によっては接種が不足している場合があるので気になる方は抗体を確認してもよいかもしれません(ただし、無症状の場合は健康保険が適応されず6500円程度かかってしまいます。*比較的安価な中和法という検査が試薬の供給停止により実施できない状況でありIGG法で実施しています。風疹などそのほかのウイルス抗体も一緒に測定する場合は1項目あたり2000円程度かかります。)。

 また、ワクチンとしては麻疹単独のものはほとんど流通しておらずMRワクチンと呼ばれる麻疹と風疹の混合ワクチンが使用されています。先天性風疹症候群を予防するために妊婦さんや妊娠を希望される方に風疹ワクチンとしてMRワクチンが接種されているので、最近MRワクチンを打ったという方は麻疹の免疫も期待されます。

 

 風疹の抗体測定・ワクチン接種が自己負担のかからない行政事業として行われていますが、ちょうど年度末の駆け込み接種の時期と麻疹の報道が重なってしまったためMRワクチンについては供給が滞ってしまっています。希望されても接種日を決められない可能性がありますのでなんとか大流行にならずにおちついてほしいものです。